京都府のお葬式のしきたり
京都は,794年に遷都され千年以上という永い間、日本の首都であり続けた土地です。そのため皇室で使われるものと一般の者が使うものを区別するという風習が今でも残っています。それが,香典袋の水引です。京都府の多くの地域では,黄色と白の水引を使います。これは,皇室へ金品を献上するときに使われていた紅白の玉虫色の水引が,黒白にも見えるものだったので,その色と間違えることを防ぐために,黒白の次に「喪」を表す色であった黄色を使い始めたためであると言われています。また,故人に花を供える「供花」では,菊ではなく「樒(しきみ)」という常緑の葉と細長い形の白っぽい花びらをもつ花を供えます。京都で,樒は榊(さかき)の代わりに神事でも使われるようです。この樒は,香りが強く実には猛毒があります。動物が近寄って荒らさないように寺院・墓地に植えられることが多いのはこの理由からと言われています。故人にも樒を供花として使うのは,故人に邪気が近寄ってこないための魔除けの意味があると京都では考えられています。京都では,友引の日にも火葬場が開いているので,友引でも葬儀や告別式を行います。しかし,友引は「死者が友を連れて行ってしまう」「さらに死者が出る」という意味から葬儀を執り行うことは避けられています。このことから,京都では友引の日の葬儀では,「友人形(供人形)」という人間の身代わりになる人形を棺の中に入れる風習が広く残っています。枕飾りも,京都では「枕膳」と呼ばれ,故人が生前使っていた茶碗を使って山盛りのご飯の真ん中に箸を立てます。葬儀の準備は町内会で行うことが多く,通夜は自宅で行われます。葬儀には竹林が多くある京都ならではの竹祭壇が使われます。宗派によって門口で茶碗が割られたり,地域によっては和紙を燃やして見送ったりという風習がありますが,これも京都らしい趣があるものです。京都の墓には遺骨を置く台がなく,基礎が土になっています。これは,遺骨が自然に土に返るようにという願いが込めて,火葬後に遺骨をさらしにまいて納骨するためで,骨壺もありません。さらに,京都では子どもが親よりも先に亡くなったとき,両親が火葬場に行かないという風習があります。辛い思いをした両親にこれ以上辛い思いをさせないようにという,思いやりの深い京都人の心配りを感じられます。このように,京都は日本の中でも特に伝統と相手を重んじる地域です。自分の葬儀は簡素でも執り行って欲しいと望む人が多く,葬儀や墓は伝統的な弔いの形をとることが今でも多くあります。しかし,このような京都の中でも家族葬という形をとる場合も増えてきているようです。