山形県では、昔はあまり電話が普及していなかったので、亡くなったことを地域や菩提寺に知らせに行く役割の人がいました。この役割の人のことを「告げ人(つげびと)」と呼びます。忌を避けるために男性が二人一組になっていくのが基本です。最近ではこの風習は少なくなっていますが、一部地域ではまだ残っている風習です。
山形県では家族葬はあまり見られません。
納棺は、山形県の最上地方では、高い屏風を立て、縄だすきにふんどし姿の男性が納棺をするというしきたりがあります。
納棺後は、お清めとして塩、スルメ、お酒を飲食します。
また、米沢・山形地方では、火葬の際に故人にわざと古くいたんだ着物を着せるという風習があります。
出棺も必ず玄関以外の出入り口を使い、火葬場からお骨が戻ってきた際には家じゅうの出入り口に味噌と塩を置くという風習があります。
葬儀祭壇も大きく、出棺後も最低一週間はそのままにして置き、一種の「忌中」の代わりにします
火葬は葬儀の前に行われます。通夜では玄関に忌札を下げた時から葬儀の前日まで講中の女性たちによって念仏が唱えられます。「念仏講」や「観音講」と呼ばれる地域組織に属している年配の女性が集まり、歌を詠います。この歌は仏教の教えを五・七・五・七・七も和歌にしてあり、優しく趣のある歌です。この歌を「御詠歌」と言います。いくつかの流派がありますが、それぞれ、仏具の鈴(れい)、雅楽の鉦鼓(しょうこ・雅楽で使われる金属の打楽器)をもちいり、御詠歌を唱和します。最近では集合住宅や住宅街で騒音だと問題提起される場面もあるようで、この風習が少なくなってきていますが、寺院で行う葬儀や農村地域では今でも続いているようです。葬儀・告別式の前に火葬を行う「前火葬」では火葬後は自宅や葬儀式場ではなく、寺院で葬儀・告別式を行うので、この風習が絶えることなく受け継がれているのでしょう。
また、山形県では「お通夜」と「おつや」とは言わず「おつうや」と呼びます。
全国的に葬儀告別式の当日に繰上法要として初七日法要を行いますが、山形県では三十五日(五七日)法要までを葬儀当日に行うようです。三十五日は四十九日同様に重要な日とされていますが初七日法要のあとは三十五日法要を省略して、四十九日法要をするのが一般的ではありますが、山形県では三十五日法要を省略するのは忍びないと考える傾向があり、省略は省略はせずに、葬儀当日に三十五日までを法要しようということのようです。