群馬県では、忌中のしるしとして、門の前に位牌を先につけた竹竿を飾ります。立臼の絵を描いた半紙を横にして玄関にはります。納棺の際には紙に六文銭を印刷たり、書いたりして棺に入れます。他には桑の木の杖を一緒に入れます。
一般的な仏式における供養では、故人の戒名を僧侶から授かり仏壇に安置しておきます。しかし、群馬県では故人の子供人数分の位牌を作り、子供たちそれぞれの家に安置するのです。位牌に故人がいるのではなく、位牌はあの世への窓口のような役割をするものであり、その向こう側に故人がいるならば、その窓口(位牌)はいくつあっても良いだろうという考えもあるようです。
出棺の時には、半紙に小銭を包み、参列者に向けて撒きます。これを「撒き銭」と呼ばれます。お金の代わりに飴やお菓子を配ることもあります。この撒き銭を拾って持ち帰ると長寿の大往生した故人にあやかって長生きができるということで縁起の良いものとされています。また、周辺近隣の人に故人の財産からふるまうということから、故人の功績に加えられるという考えもあるようで、故人があの世に行っても良いいことをしたという思いができるようにとの願いも込められているようです。家族葬を行うようになった最近ではあまり見られない風習ですが、高齢者の葬式ではこのような昔からの伝統的な風習は続いているようです。
告別式の終了後に、箸を一本だけ使ってお椀の米を少しだけ手にとって食べる(食べるまねをする。)という風習もあります。これを「でわの飯」とか「でがの飯」と呼ばれるそうです。皆で一緒に故人を見送るという意味があるようです。
葬儀一連に関して、町内会の家が何軒かの単位で「隣保班」と呼ばれる班を作り、助け合って葬儀を執り行います。
葬儀では受付が設けられます。一般的に会葬者の多い葬儀では「会社関係」「親族」「一般」など、受付がスムーズに済むように複数あります。群馬県では複数設けられる受付に「新生活」という受付が設けられます。
この「新生活」とは、「新生活運動」と呼ばれ、昭和20年~30年代にかけて行われた住民運動です。戦後、貧しい時代に無駄に見栄を張るようなことはやめようと冠婚葬祭の虚礼廃止を求めた運動です。一般的な香典は5,000円~10,000円ですが、群馬県では香典は1,000円にして代わりに会葬返礼品は辞退します。
ただ、返礼品をまったく用意しないわけではありません。新生活用に1,000円程度の返礼品を用意しますし、一般的な香典も受付ます香典袋の左上に「新生活」と書きます。「新生活運動の趣旨に添ってお返しを辞退いたします」と印刷された香典袋も販売されていることもあります。
ですので、喪家では一般的な香典に対する返礼品と「新生活」に対する返礼品と2種類の準備が必要になってきます。
高崎市では、「香典は1,000円にしましょう」「返礼品は辞退し、会葬礼状だけを受け取りましょう」「お通夜で弔問者にはお清めの酒、砂糖などは用意しないようにしましょう」などの呼びかけがあるそうです。