○納棺までは故人を死者として扱わない
高知県では、納棺前の故人に対し、「生きている人」として接する風習があります。
故人は普段と同じ布団に寝かせ「おはようございます」など亡くなる前と同じように声をかけ、家族が食べるのと同じ食事を枕元に運びます。
土佐郡の一部では、故人を亡くなった人ではなく、病気で休んでいる人と考え「養生見舞い」として故人の好物を用意し、ごちそうを作ります。
「養生見舞い」を供える際には、家族みんなで「起きて食べませんか」と声をかけます。
○納棺の前日に添い寝する
高知県では、納棺の前日に身内の人が故人に添い寝をするしきたりがあります。
遺体に添い寝をするのは、故人を寂しがらせないようにという意味合いからです。
知らない人からみれば、驚くようなしきたりですが、もともと通夜というのは人が亡くなった時から告別式の朝まで営まれるものでした。
故人に添い寝するのは、故人の霊魂を肉親に敬称させるためという話もあるそうです。
○羽織を振る
高知県では、羽織を振ることがあります。
柩に故人が愛用していた羽織を裏返しにして、さらに上下を逆さまにしてかぶせます。
その上には茶碗を載せます。
そして玄関を出る時に茶碗を割って羽織を3回振るのです。
茶碗を割ることを「食絶ち」、羽織を振ることを「お願いほどき」や「願ぶるい」、「棺ぶるい」と呼んでいます。
どちらも「故人の現世への未練を絶つ」という意味合いがあり、羽織を振る事には故人が生前に神仏に願ったことを取り下げるために行うようです。
また、土佐では茶碗を割るときに「これでしもうた」と声に出して言うそうです。
○納棺時に煮た豆を入れる
全国には、納棺の際、故人が生前愛用していた品物や故人の好物などと合わせてしきたりとして決まったものを入れる地域がいくつもあります。
高知県では故人の棺に大豆や小豆を煮てから入れるしきたりがあります。
そのまま入れるのではなく、わざわざ煮てからいれる理由は「芽(目)が出ないようにする」ためです。
つまり、故人が棺の中で目を開けないようにという意味で、故人に成仏して欲しいという願いが込められていると考えられています。
○その他の風習
墓穴が掘られると「おがみ石」と称して穴の周囲に河原で拾った小石をたくさん積む。
仏を床に入れたまま、一ヵ所のつり手をはずした「三隅蚊帳」に入れる地域もある。
仏には紋付羽織を後ろ前に着せる。
西武地域では、墓地は小高い山の中腹にあるのが常で、葬列に参加した女性はたとえ家族でも、坂の下から引き返すというしきたりがある。