最近、以前は見向きもしなかった新聞の折り込み広告に「◯◯葬儀社」という文字を見つけると、必ず目を通すようになりました。ネットで自宅周辺の葬儀社や葬祭場を検索したりしています。
「50才を過ぎたばかりなのに、もう?」とか「体調に不安があるのか?」と言われたりもしますが、昨年父の葬儀を経験して、葬儀に関するイメージを描いておかねば・・・という気持ちが強くなったのです。
他県に住む父は、60代の終わり頃から進行性の病を患い日常的に病院に通っていましたし、亡くなる一年前から入退院を繰り返していましたので、ある程度の覚悟はしていました。
そして、定年退職後に地元の小さい葬儀社の経理事務を手伝っていたご縁もあり、何かあったらこの会社に葬儀を頼もうということになっていました。
結論から言うと、特にトラブルもなく無事に葬儀を終えることができたのですが、それは懇意にしていた地元の葬儀社に頼めたからで、それでもイメージしていたのとは異なる様々な事柄に驚きました。
葬儀準備にあたって、父が亡くなったことを誰に知らせるのか?そこからまず迷いました。
また、知らせる際にどんな言い方をしたらいいのか戸惑いました。「葬儀に来てくれ」というニュアンスになり過ぎないよう言葉を選ぶのに気を遣いました。
父は定年まで公務員として定年退職まで働き、町内会の役員を何度も引き受け、それほど社交的ではないものの、それなりに知人の数は多かったように思います。ところが、病弱とはいえ80才まで存命だったものですから、イメージしていた状況とは異なっていました。
まず、6人兄弟の末っ子だった父の兄弟の半数は既に他界し、存命の兄弟も既に高齢。その伴侶も同様。そして、若い頃から家族ぐるみで旅行やカラオケで交流のあったご家庭でも同様。80代〜90代ともなると、家族の介護を受けている人や施設に入所している人も多く、一人で葬儀に出かけて来られるようなご老人は少なかったのです。甥や姪は働き盛りで単身赴任や出張中という状況が複数ありました。
喪主として動き始める際、「ごく普通の、派手すぎず貧相でもない葬儀で」と漠然と考えていた私は、ここで意外な選択することになります。
◆家族葬という選択
葬儀社の方に相談すると、「今は家族葬にする人も増えている」とのこと。
「家族葬」とは遺族だけで行う葬儀という意味だと思っていましたが、今は親戚やごく親しい友・知人を加えた少人数で行うのが一般的だということでした。地方都市でも核家族化・高齢化が進み、小規模で行うことも増えたようです。
そこで母や姉、妻と相談し「家族葬」とすることにし、葬儀が発生した際に回る町内の回覧板にもその旨を書いてもらうことにしました。町内でごく親しかった人には口頭で説明しました。
父が懇意にしていた地元密着型の小さな葬儀社への依頼でしたので、細かい打ち合わせもスムーズにできたという印象です。まず「当社としてお手伝いできることは◯◯と◯◯そして喪主様ご遺族様に御手配頂くのは□□と□□でございます」と明確な説明と、価格もわかりやすい一覧表になっていて、「友引が入るため葬儀終了までの日数が延びるため、おそらくドライアイスの費用がこれに追加となります」等々細かいことまで明確に伝えてくれました(遺体が痛まないために必須のドライアイス、案外高価なのです)。
見積もりの金額は総費用なのか?という確認はしてください。つまり、葬祭費用一式費用(祭壇、棺、納棺一式、枕飾り、寝台車、霊柩車、花束、その他諸々)に加えて寺院費用(読経・戒名etc.)や変動費用(会葬礼状、返礼品、通夜料理、告別料理etc.)やセレモニーホールや斎場の使用料などの費用もあるという認識が必要です。
我が家は祖父母以前の代からの菩提寺があるため、連絡はズムーズでしたが、それでも祖父母以来の葬儀ですので、お布施の金額や戒名のランクもわからず、
これもかなり慌てて調べました。
そして、様々な手配でうっかり忘れそうになって慌てたのが、喪主としてのスピーチでした。これはもう余裕がないので、原稿は妻に頼みまして、当日はそれを読み上げるという形にしました。父の存命時の思い出や友人知人への感謝の言葉、闘病の簡単な経緯などを込め、最後に会葬へのお礼で結びました。
◆小規模葬儀の注意点
葬儀を営むにあたっては支出がある一方で収入もあります。
そういう意味では、少人数にしたから費用が少なくて済むというわけではないということに注意した方がよいかもしれません。
料理費用の単価は、一般葬と家族葬では大きな差はありません。
お香典には、関係性により一般的に「相場」とされる金額がありますので、
おいでになる顔ぶれで大体の総額も想定することは可能ですので(通夜・告別式共に参列できない方からのお香典もあります)、少人数だから費用が少なくて済む・大規模だから費用が多くかかるとは限らないことを念頭に置かれるとよいと思います。
私の実家のある地元では、市民生活制度的な「香典一律二千円」という風習がありましたし身内は高齢者ですので、少人数の葬儀は赤字覚悟でした。もちろんその風習を無視して一般的な相場でお包み下さる人もおられますし、私の会社関係からのお香典もあったので、結果はギリギリ赤字を免れましたが、葬儀においても会葬の顔ぶれや規模により「支出」と「収入」のバランスを想定することは必須だと学びました。
出身地を遠く離れて都内で暮らす私が死亡した時、まず葬儀社の選定や読経をお願いするお坊さんの件から始めなければなりません。また、その時の社会的立場や年齢、交流関係によって葬儀の規模や形を考えなければ・・・その後は納骨する墓の事も。今から家族に頼んでおく内容を考えています。大抵予告なく訪れることが多い死に際して、葬儀は待ったなしですから。