家族のあり方や時代背景の推移に合わせて、故人を弔うお葬式の考え方や形式が変わってきています。これまでの一般葬は多くの参列者を招いて行われていました。菩提寺や自宅で執り行われ、ご近所の方にもお手伝いいただいていましたよね。
そういう形式に対するものとして、家族葬という新しい形式が登場しています。親しい限られた人のみで執り行う小規模の葬儀のことです。参列者数は10~30名程度までが目安で、少人数で静かに故人を偲び、送ることになります。人数だけをみても、一般葬とはずいぶんと違いがありますよね。
現状、家族葬を選択する人はどの程度いるのか?家族葬の割合と推移について、紹介してまいります。
家族葬というのが言われるようになったのは、平成以降のことです。登場してからまだそれほど経っていませんが、年々よく耳にしている気がします。新しい葬儀の形として、家族葬を選ぶ人たちが確実に増えているのです。
2019年に公正取引委員会が発表した「葬儀の取引に関する実態調査報告書」を見ると、一般葬が63%、家族葬が28.4%、直葬5.5%、一日葬2.8%、社葬0.8%という割合になっています。葬儀会社に直近5年間の葬儀形式の推移について聞いてみると、「家族葬が増加傾向にある」と51.1%が回答しています。反対に「一般葬が減少傾向にある」と68.8%が回答しており、葬儀の形式が一般葬から家族葬に推移している実情が見てとれます。その推移の様は、かなりの勢いがあるといえるのではないでしょうか。
葬儀における家族葬の割合の推移や増加の背景に関して詳しくご説明します。
家族葬が増加している理由には、生活環境や世の中の変化があります。具体的には「人と人の関係が希薄になったこと」や「少子高齢化が進んだこと」や「現代人の宗教離れ」があります。人の繋がりが希薄になったので参列者は少なく、高齢化によって縁のある人も少なくなります。葬儀を行う子供も少子化世代なので、ひとりで背負うには一般葬では負担が大きいのです。あとは宗教にとらわれず、自分らしい葬儀でいいと思っている人が増えているので、この流れで小規模で自由な形が増加しています。
首都圏ではすでに、家族葬の割合が50%を越えているというデータもあります。終活という言葉も近年よく耳にしますが、これが使われだしたのが2010年頃のことです。終活の考えが世の中に浸透していくのに合わせて、家族葬という形も受け入れられ、広まっていったのです。
家族葬のメリットは、まずは故人とゆっくりお別れが出来ることです。事前の準備もそれほどないので、全体的にゆっくりと静かに故人と過ごすことが出来ます。これが最大のメリットではないでしょうか。そして参列者がいないので、対応をしなくて済み、精神的な負担も軽くなります。小規模で執り行うので、費用を抑えられるところもメリットですね。他にも世間体を気にせずに、思うような葬儀ができるところも家族葬らしさといえます。
デメリットは家族葬を終えてから、周囲の人に「どうして知らせてくれなかったの」等と言われることがあります。故人とお別れの時間を持ちたい人が自宅に訪れて、葬儀後に対応に追われたりします。このようなデメリットを回避するためには、家族葬で執り行うことを事前にしっかりと伝えて、理解してもらうことが大切ですね。どのような葬儀にもメリットとデメリットの両面があるので、それを知っておくことも必要になります。
家族葬の流れは一般葬と同じです。ご逝去があり、搬送と安置の後に打ち合わせをします。お通夜と葬儀と告別式に続いて火葬があり、その後初七日となります。流れは同じですが、参列者数が少ないので告別式と葬儀にかかる時間は短くなります。お焼香などに要する時間が短くなり、受付も省略されるからです。具体的には通夜は40分程度、告別式は40分〜50分になります。火葬については所用時間は同じですが、1〜2時間程度とみています。
最後にかかる費用についてですが、平均すると90万円〜140万円くらいです。一般的な葬儀は200万円弱の費用と言われているので、約半分といったところですね。小規模で参列者も少ないので予算が抑えられるのは当たり前ですが、ここで注意しておきたいことがあります。お香典をいただかないので、この収入を葬儀費用に充てられないのです。ということは、予算が安くても必ずしも負担が軽いことにはなりません。単純に低予算とは言えないのですね。